【5分でわかる】江戸川乱歩の生い立ち、代表作、文学活動

江戸川乱歩

江戸川乱歩は、日本を代表する小説家であり評論家です。

乱歩は自身が数々の名作を残しただけでなく、編集者として多くの作家を育て、業界の発展にも大きく貢献しました。

本記事では、そんな江戸川乱歩の生涯と文学活動について詳しくご紹介します。

目次

江戸川乱歩の生い立ち

江戸川乱歩(本名:平井 太郎:ひらい たろう)は1894年(明治27年)、三重県名賀郡名張町(現在の名張市)に生まれました。父は名賀郡役所書記の平井繁男、母はきくで、平井家は武士の家柄でした。

祖先は伊豆伊東の郷士であり、後に伊勢の津藩の藤堂家に仕え、乱歩の祖父の代まで藩士として勤めました。

2歳の頃、父の転勤に伴い三重県鈴鹿郡亀山町(現・亀山市)に引っ越し、翌年には愛知県名古屋市に移りました。以降、乱歩は生涯で46回の引っ越しを経験しました。

乱歩が探偵小説に初めて触れたのは、小学生の頃に母に読み聞かされた菊池幽芳訳『秘中の秘』(ウィリアム・ル・キュー原作)です。中学時代には、押川春浪や黒岩涙香の小説に没頭しました。

旧制愛知県立第五中学校(現・愛知県立瑞陵高等学校)を卒業後、早稲田大学の政治経済学科に進学。在学中に処女作『火縄銃』を執筆し、博文館の雑誌『冒険世界』に投稿しましたが、掲載はされませんでした。

その後、貿易会社の社員や古本屋、支那そば屋など多くの仕事に就きました。

1917年(大正6年)11月、乱歩は三重県鳥羽にある鳥羽造船所電機部(現・シンフォニア テクノロジー)に就職し、庶務課に配属されました。

技師長に気に入られた彼は、社内誌『日和』の編集や地域交流活動に従事し、子供たちにおとぎ話を読み聞かせる会を開くなどの仕事を任されました。無断欠勤などもありましたが、大目に見られていたようです。

乱歩は『日和』で編集だけでなくイラストも手がけました。この会社には1年4か月勤務しましたが、この時期の経験が後の作品『屋根裏の散歩者』や『パノラマ島奇談』の参考になったとされています。

1919年、乱歩は読み聞かせ会で知り合った坂手島の小学校教師、村山隆子と結婚しました。

江戸川乱歩の文学活動

江戸川乱歩は1923年(大正12年)、『新青年』に掲載された『二銭銅貨』でデビューしました。この作品は森下雨村や小酒井不木から高く評価されました。

乱歩は欧米の探偵小説に強い影響を受け、本格探偵小説を志向する一方、『心理試験』や『赤い部屋』といった異色の作品も手がけ、日本の探偵小説界に大きな足跡を残しました。

また、『人間椅子』や『鏡地獄』に代表されるフェティシズムや怪奇小説のジャンルも初期から執筆しており、岩田準一とともに衆道の少年愛や少女愛、男装・女装、人形愛、サディズムやグロテスクな趣味を含む通俗探偵小説は、昭和初期から一般大衆に受け入れられました。

当初、乱歩は小説家として生計を立てるか悩んでおり、デビュー作『二銭銅貨』以降も散発的に短編小説を執筆するに留まりました。

しかし、1925年に森下雨村の企画で『新青年』に6か月連続で短編を掲載する機会を得、その中の『心理試験』が好評を博したことで、小説家としての道を決意します。

会社を辞めて専業作家となったものの、早くも探偵小説家として行き詰まりを感じ、連続掲載の6作目『幽霊』は自ら「愚作」と評し、小説家になったことを後悔したといいます。

しかし、森下の紹介で『写真報知』や『苦楽』などの雑誌に通俗的な作品を掲載し、生計を安定させました。

乱歩は海外の作品にも通じ、『緑衣の鬼』『三角館の恐怖』『幽鬼の塔』などの翻案性の高い作品を残しています。また、探偵小説に関する評論『幻影城』も執筆しました。

1936年には少年向け作品として『怪人二十面相』を発表し、明智小五郎と小林少年、少年探偵団が活躍するこのシリーズは少年層から圧倒的な人気を得てシリーズ化されました。

その後、他にも多くの少年向け作品が作られるようになりました。

戦後、乱歩は評論家やプロデューサーとして活動し、探偵小説誌『宝石』の編集や経営にも携わりました。

また、日本探偵作家クラブの創立と財団法人化に尽力し、同クラブに寄付した私財100万円を基に江戸川乱歩賞が創設されました。同賞は第3回から長編推理小説の公募賞となりました。

晩年、乱歩は高血圧、動脈硬化、副鼻腔炎(蓄膿症)、そしてパーキンソン病を患いながらも、家族に口述筆記をさせて評論や著作を続けました。

1965年(昭和40年)7月28日、蜘蛛膜下出血のため東京都豊島区池袋の自宅で70歳で亡くなりました。

戒名は智勝院幻城乱歩居士。正五位勲三等瑞宝章を追贈され、8月1日には推理作家協会葬が行われました。墓所は多磨霊園にあります。

江戸川乱歩の代表作

江戸川乱歩は、日本を代表する推理小説作家であり、その独特な世界観は多くの人を魅了してきました。怪奇、幻想、グロテスクといった要素を巧みに織り交ぜ、日本の探偵小説の礎を築いた人物です。

ここからは、江戸川乱歩の代表作を10作品厳選してご紹介します。

  1. 怪人二十面相
    少年探偵団シリーズの代表作であり、江戸川乱歩を代表するキャラクター、怪人二十面相が登場します。明智小五郎との対決は、多くの読者を興奮させました。
  2. D坂の殺人事件
    江戸川乱歩の初期の代表作であり、密室殺人の古典として知られています。緻密なトリックと、人間の心理を深く描いた作品です。
  3. 人間椅子
    人間の歪んだ欲望を描いた衝撃的な作品です。グロテスクな描写と、その裏に隠された悲劇が、読者の心を揺さぶります。
  4. 芋虫
    人間の異常な心理をテーマにした作品です。猟奇的な事件と、主人公の歪んだ愛情が、読者を不気味な世界へと引き込みます。
  5. パノラマ島綺譚
    孤島を舞台にした幻想的な作品です。怪奇現象と、人間の心の闇が深く描かれています。
  6. 屋根裏の散歩者
    屋根裏部屋を舞台にしたミステリー作品です。奇妙な出来事が連鎖し、読者をハラハラドキドキさせます。
  7. 少年探偵団シリーズ
    少年探偵団の活躍を描いたシリーズです。怪人二十面相との対決だけでなく、様々な謎解きが楽しめます。
  8. 押絵と旅する男
    押絵という独特な題材を用いた幻想的な作品です。人間の心の奥底にある孤独や寂しさを描いています。
  9. 二銭銅貨
    二銭銅貨を巡るミステリー作品です。巧妙なトリックと、登場人物たちの心の葛藤が描かれています。
  10. 赤い部屋
    赤い部屋という閉鎖的な空間を舞台にした心理スリラーです。人間の恐怖心と、その心理が深く描かれています。

江戸川乱歩の関連人物

  • 谷崎潤一郎: 乱歩の才能をいち早く見抜き、文壇に紹介した人物。文通を通じて、乱歩の創作活動に大きな影響を与えました。
  • 菊池寛: 文芸雑誌『文藝春秋』の編集長を務め、乱歩の作品を積極的に掲載。乱歩の知名度を上げる上で重要な役割を果たしました。
  • エドガー・アラン・ポー: 乱歩のペンネームの由来となったアメリカの推理小説作家。ポーの作品は、乱歩の創作に大きな影響を与えました。
  • 横溝正史: 日本の推理小説界のもう一人の巨匠。乱歩とは互いに影響を与え合い、深い友情で結ばれていました。
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